お地蔵さん修復記(その二)


令和3年5月~

 

三乗堂さんの工房でいよいよ修復作業が始まるようです。

 

まずは、修理前の状態を記録するために高画質のカメラで撮影。

この後、矧ぎ目の緩んでいる箇所、不適切な後補箇所、錆び切った鉄釘などを解体・撤去します。

 

次はクリーニングです。

 

 


令和3年6月~

 

解体が終了。

キャー!(◎_◎;)、お地蔵さんがバラバラだ~

 

 

 右手の緑青箇所をクリーニングした所、漆が混ざっていないと思われる木屎漆が出てきました。おそらく、木屎漆の上に直接金色を塗り、その塗料が経年で緑青をふいたと思われます。木屎漆ですが、手でも崩れるくらい、とても柔いです。

 

 今回の修理で木屎漆を除去して、新たに木屎漆を埋めるか、大きく欠けている所は木材を足そうか、学芸員さんと協議します。


躰内に花押が確認されました!


4文字あります、造像の仏師が誰か分かるといいなあ~

 

 

【花押(かおう)とは】

 日本では、初めは名を楷書体で自署したが、次第に草書体にくずした署名となり、それを極端に形様化したものを花押と呼んだ。日本の花押の最古例は、10世紀中葉ごろに求められるが、この時期は草名体のものが多い。11世紀に入ると、実名2字の部分(偏や旁など)を組み合わせて図案化した二合体が生まれた。また、同時期に、実名のうち1字だけを図案化した一字体も散見されるようになった。いずれの場合でも、花押が自署の代用であることを踏まえて、実名をもとにして作成されることが原則であった。

 


膠湿布(にかわしっぷ)

 

 頭部の彩色の剝落が激しいため、汚れの吸着と剝落止めを兼ねて膠湿布を行いました。

 

 2%の膠液をコットンに染み込ませている様子です。


含浸強化(がんしんきょうか)

 

  虫喰箇所は大変脆くなっているため、メチルセルロース1%液を注射器にいれ、虫喰いの穴や虫喰いの表面などに染み込ませています。

 

※〔含侵〕紙や木材、鋳物に生じる微細な穴などに、液体をしみこませること。

 

 


湿式クリーニング

 

エタノールと精製水を混合した液を含ませた綿棒でクリーニングをしている様子です。

 

 


錆びた鎹(かすがい)撤去

 

この写真はお像の像底にある錆びた鎹を撤去している風景です。今回抜いたこの箇所はヒノキ材で埋木を行いますが、打ち替えようかと思っている場所は、鉄製+焼き漆かステンレス製、どちらにしますか相談です。

(鉄製+焼き漆はまた錆びてしまう恐れがあるので、ステンレス製が良いかなと思っていますが、ステンレス製を嫌がる方もいます。)

 

 


胸飾取り外し

 

 金属加工専門の方に修理をしていただくため取り外しました。

先週、専門の方に胸飾をお渡しし、10月中旬までに戻ってくる予定です。色味は現状のままで、不足した装飾を復元していただきます。

こちらに戻ってきた後、不足しているガラス玉をこちらで制作し組み立てを行う予定です。