前回、「鉄釘・鎹(かすがい)除去」までご報告させていただきました。7月に入り、「補作」の工程に入りました。欠失・亡失した箇所をヒノキ材で新しく補ったり、隙間が大きいところをヒノキ材の薄板を嵌(は)めていきます。また、鉄釘・鎹を撤去した箇所に埋木(うめき)を行いました。
部分的に接着・組み立ても行っており、矧ぎ目(接着部分)に木屎漆(こくそうるし)をしています。
① 脚部右側
ねずみ害と思われる欠失箇所を
ヒノキ材で補作した修理後の写真
② 脚部左側
接着が緩んでいたため部分解体を行い、再接着をした後、
欠失箇所を補作した修理後
③ 一番痛々しかった左手の指
亡失箇所を補作して指が戻りました。良かった~
④ 裳裾(もすそ)に埋まっていた錆びた鉄釘を撤去し、埋木(ヒノキ材)を行った修理前後写真
⑤ 右手に埋めてあった漆のない木屎ペーストは手で触ると簡単に崩れるほど脆かったため、除去し、メチルセルロースで含浸強化(がんしんきょうか)を行った後、木屎漆(こくそうるし:生漆、小麦粉、木粉を混ぜたもの)を充填した修理前後写真
⑥ 体幹部と脚部に生じていた隙間に薄板を入れて、木屎漆で成形を行う
⑦ 体幹部の枘穴(ほぞあな)に埋まっていた木材を撤去し、枘穴を再利用して枘を新たに補作しました。今回の修理で補った箇所は後世にわかりやすいように「補」の字を入れています。
これらの「補」の字は、仏像修理師としての礼儀というか、歴史への敬意の現れなんでしょうね♡